JMDC

2024年ニュース

2024-07-12
JMDC、大規模疫学レセプトデータベースにおける老年症候群リスク薬の処方と老年症候群の発現に関する調査研究を実施
株式会社JMDC(本社:東京都港区、代表取締役社長兼CEO:野口亮、以下「JMDC」)は、大規模疫学レセプトデータベースにおける老年症候群リスク薬の処方と老年症候群の発現に関する調査研究を実施いたしましたので、以下のとおりお知らせいたします。
なお、本調査研究とその成果について、去る6月に行われた「第66回日本老年医学会学術集会」にて発表いたしました。

1. 調査研究の背景と目的
高齢者においては、多剤併用を背景として薬物有害作用が出現しやすいとされていますが、老年症候群に関する副作用出現の実態が参照できるデータは、僅かしかありません。
また、大規模疫学レセプトデータにより、老年症候群のリスク薬の処方と老年症候群の発現の関連を示した研究も僅少という状況にあります。
そこで、後期高齢者医療広域連合のレセプトデータを用いて、老年症候群発現者とそのリスク薬の処方との関連を明らかすることを本調査研究の目的といたしました。

2. 調査の方法
秋田県後期高齢者医療広域連合にご協力頂き、その台帳データとレセプトデータを活用、2021年4月から2022年3月まで継続して在籍されている方のうち、
A.2022年3月末時点において75歳以上
B.2021年11月時点において、JMDCのアルゴリズムに基づく多剤条件に該当する方
C.多剤は、「6剤以上」と定義
上記A.~C.の3つの条件を満たす、55,599人を分析対象としました。

また、その分析については、全処方に対する老年症候群リスク薬の割合や多剤該当者を集計し、性別・年齢階級の分布調整を行った上で、以下の1.~3.の3つのパターンで各老年症候群有病率を2群比較、2021年4月~2022年3月における医薬品の服用有無と、老年症候群の有無との関連を分析いたしました。
1.「老年症候群リスク薬服用あり」と「老年症候群リスク薬服用なし」
2.「老年症候群リスクのある精神疾患薬服用あり」と「老年症候群リスクのある精神疾患薬服用なし」
3.精神疾患の中でも、特に影響力の高いと言われているエチゾラムに着目し、「エチゾラム服用あり」と「各老年症候群リスク薬服用なし」

3. 調査結果
対象症例のうち、全処方に対する老年症候群リスク薬の処方割合は約15%でありました。(結果-1)また老年症候群の症候別にリスク薬の服薬有無を確認すると、せん妄、ふらつき、便秘、尿失禁、抑うつ、排尿障害、記憶障害、転倒、食欲低下については、ほぼ全てで各リスク薬の服薬ありが服薬なしを上回っており、老年症候群発現とリスク薬の服薬の有意な関連が認められる結果となりました。(結果-3)さらに、リスク薬のうち向精神薬とエチゾラムに着目した分析においても、同様に有意な関連が認められる結果となりました。(結果-4、結果-5)加えて、剤数が多くなればなるほど、各リスク薬の処方率においても有意に増加傾向にあることも認められる結果となりました。

4. 考察と今後の展開
後期高齢者の大規模レセプトデータを用いた本調査研究によって、老年症候群の発現とリスク薬の服薬状況には、有意な関連が認められる結果となりました。
他方で、高齢者医療の現場においては不可欠な処方も多いため、個々の患者の状況を踏まえたポリファーマシー対策、具体的には、本調査研究と同様の分析を行ったうえで地域毎の施策に活かし、対策を進めていくことで、国民医療費の健全化に寄与することが可能であると考えております。

なお、本調査研究にて共同研究にご尽力頂いた、地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター長 秋下雅弘氏は、以下のように述べています。
「本調査研究は、秋田県という後期高齢者医療広域連合の一つの単位全体を対象として薬剤起因性老年症候群のリスクを解析した点に意義がある。各分析での背景因子等によるバイアスの可能性、横断調査ゆえに薬剤使用と老年症候群の因果関係は不明という手法的な限界はあるものの、今後同様な分析を行って通知事業等に活用する広域連合が増えると予想される。」

今後も引き続き、JMDCが有する多様なデータを活用した取組と社会実装を通じ、「社会課題に対しデータとICTの力で解決に取り組むことで、持続可能なヘルスケアシステムの実現」というJMDCの描く未来の実現に資する取組を推進してまいります。

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